夫婦で営むパン工房は、ドイツパンが主役です

ドイツ＆オーストリアのパンを作る貴重なパン屋さん

夜宮公園や旧安川邸などがある戸畑区には、区役所が「パン屋さんMAP」を発行するほど「パン屋さん」が多いことをご存じですか？長年愛されている老舗や夫婦で営むこぢんまりとしたお店など、それぞれの店が個性あふれる魅力的なパンを作っています。

今回ご紹介する「パン工房 LIBRE」は、J R九州工大前駅から５分ほど歩いた住宅街にあります。最大３人ほどしか入店できない小さなお店ですが、北九州市では珍しくドイツとオーストリアのパンを作っているため、遠方から足を運ぶお客さんもいるほどの人気店です。

味はもちろん、形にもこだわっています

店主は、福岡市にあるオーストリア菓子とパンの有名店「サイラー」で修業を積んだ保田稔夫さん。「北九州にドイツパンを作っているお店がなかったので、地元で挑戦してみたかった」と、15年前に「パン工房L I B R E」をオープン。笑顔の素敵な奥様と二人三脚でお店を切り盛りしています。

オーストリアのお食事パン各種。左から「カイザーセンメル」（ゴマ108円、プレーン108円、ひまわりの種130円）、「ザルツシュタンゲル」（130円）、「塩バターパン」（130円）。

オープン当初はドイツパンに馴染みがなかったためかお客様の反応は鈍かったそうですが、徐々に「本格ドイツパンが購入できる」と口コミやS N Sなどで評判が拡散。オープン当初、ドイツパンは全体の２〜３割にとどめていたそうですが、今は７割を占め、すっかりお店の主力メニューになっています。

異国の味わいが楽しめる！自慢のパンをピックアップ

伝統的な食事パンや菓子パン、惣菜パンなど、常時40〜50種類を揃える多彩なパンの中から、保田さんに自慢のパンをピックアップしてもらいました。

「プレッツェル」（216円）。右は「2種のチーズプレッツェル」（260円）。九州産クリームチーズとエダムチーズを使用しています。

まずは一番人気の「プレッツェル」。噛みごたえがあり、ほんのり香ばしい生地に塩味がアクセントになるシンプルな味。だからこそ素材にこだわり、ドイツ産のライ麦と大粒岩塩を使っているそうです。

なお、ドイツパンにはドイツから取り寄せた材料を使っていますが、パンの種類によって使う材料を変えています。例えば、糸島産の小麦、飯塚市の卵、熊本県の牛乳…などなど。常に地元や近隣の良い食材を仕入れるように心がけているそうです。

「ラウゲンクロワッサン」（1個260円）。

こちらは北海道の「よつ葉発酵バター」を織り込んだ「ラウゲンクロワッサン」。ふわふわ＆サクサクの食感と、バターの香りがふんわりと鼻をくすぐります。

「紅茶とりんごのツォップ」（281円）。

アールグレイの生地を６本で編み込み、立体感にこだわったパン。以前はパティシエだった時代もあるという保田さん自家製の、リンゴのコンポートも絶品です。

「カヌレ・ド・ボルドー」（249円）。

保田さんのこだわりは材料だけではありません。この「カヌレ・ド・ボルドー」はフランスの伝統的な製法にもこだわっています。バターで作れば楽なのですが、非常に手のかかる蜜蝋（福岡県産）を使用。銅の型で焼き加減を見ながら試行錯誤を重ね、納得のいく味を導き出すのに２ヶ月もかかったそうです。

ドイツの風を、北九州にもっと吹かせたい

「形にもこだわっているので、店内では並んだパンたちの見た目も楽しんでほしいです」と保田さん。

午前中は店頭販売用や委託販売先のパンを作り、午後からはレストランやカフェなどから依頼されたオーダーメイドのパンの製造と配達をこなす保田さん。通常の仕込みに加え、メニュー開発などにも挑戦しているので「夫の睡眠時間は正味３時間くらいかもしれません」と、奥様も保田さんの頑張りに一目置いています。

保田さんが愚直に、こだわりを持ってパンを作り続けるのは「もっと北九州にドイツパンやドイツの文化を広げていきたい」という思いがあるからこそ。
「オクトーバーフェストといったイベントのお陰で、ドイツビールはかなり北九州にも浸透してきました。あとはそんなドイツビールのお供に、プレッツェルが自然と出て来るようになれば最高です」。

穏やかな表情の奥に、熱い情熱を潜ませる保田さんの話を聞いていると、保田さんが目指す風景の実現は、そう遠い先ではない気がしました。

※価格はすべて税込み。令和5年１月現在の価格です。

店舗情報

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